第85章 焦るな、俺がいる

南雲玲奈は、前庭から裏庭へ――ほとんど飛ぶように駆けた。

辿り着くなり、声を張り上げる。

「香澄? いるの? ママだよ、聞こえたら返事して……!」

けれど返ってきたのは、しんとした静けさだけ。

胸の奥がざわりと波立つ。玲奈は焦りに駆られ、さらに必死で探し回った。

後ろから追いついてきた横尾孝人が、思わず口を挟む。

「香澄が、そんな遠くまで行くとは思えない」

その言葉が終わるより早く、玲奈は花壇の脇へ駆け寄り、茂みの下から小さな革靴を拾い上げた。細工の凝った、子ども用の靴。

孝人の目つきが、すっと鋭くなる。

――香澄の靴だ。今夜ここへ連れてきたとき、履き替えさせたばかりの。

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